アクセサリーの製作方法には大きく分けて2通りの方法があります。
以前から何度か製作方法に関しては記事にしてきましたが、今回紹介するオーダーメイドアクセサリーの製作方法をご理解いただくため、まずは復習ということで簡単に製作方法を紹介しましょう。
アクセサリーの製作方法
ABOUTページのMAKING FLOWでも簡単に紹介していますが、直接地金(金属素材)を加工する方法と、キャスト(鋳造)技法で製作する方法の2通りに大きく分かれます。
2つの方法をざっくりと説明します。
地金(金属)を直接加工する方法
こちらの方法は非常に分かりやすいです。
シルバーアクセサリーならシルバー、ゴールドのアイテムならゴールド地金、というようにそれぞれの素材を叩いたり伸ばしたり切ったり削ったりくっつけたりしてアクセサリーに仕上げる方法です。
簡単にいうと、薄く伸ばした板を丸めて、端同士をくっつければリングになります。
何かのパーツに輪っかをつければペンダントトップやチャームとして使用できます。
くっつける方法として一般的なのは「ロウ付け」という技法です。詳しくは(コチラ)をご覧ください。
基本的にはシンプルなアイテムを製作する際に用いられますが、下記に説明するキャスト技法で製作したものよりも強度が強いので、特定のパーツを意図的に地金から製作する場合もあります。
ある海外ブランドはゴツい指輪でも原型は地金から製作する、と聞いたこともあります。
キャスト製法で製作する方法
キャストとは鋳造のこと。
つまり、型を製作し、その中に溶かした金属を流し込んで製作する方法です。
細かな造形や複雑な形なども製作できるので、現在のアクセサリー製作の主流と言えますが、鋳造の歴史は古く、分かりやすいところでいうと鎌倉の大仏なども鋳造で製作されています。
アクセサリーの製作の場合、「ロストワックス」という製法がメインです。
原型をワックスで製作し、周りに石膏を流した後焼き固め(焼成)ることで中のワックスが溶けて流れ蒸発し、石膏の中に原型と同じ形の空洞ができるので、そこに溶かした金属(湯)を流し込む、という方法です。
ワックスが溶けて無くなるので、「ロストワックス」と呼ばれるわけです。
コチラでキャスト(ロストワックス)製法について詳しく書いていますので、興味のある方はご覧ください。
さて、上記を踏まえ、今回紹介するオーダーリングは地金を直接加工して製作しました。
こちらです。
オーダーメイド LP 第二関節リング
今回はリングのオーダーの中でも非常に珍しい、「第二関節に装着するリング」のオーダーでした。
こちら。
ご依頼主様から送っていただいたご本人の着用画像。
画像を見て一目瞭然、第二関節の部分に装着できるようにデザインされています。
詳しく見てきましょう。
正面の大きな円の部分にはLPの文字が入ったロゴマークが。
使用した地金(素材)はシルバ−925です。
側面には六角形の同じくLPのロゴマークが配置されています。
↑の画像から分かるように、2本のリングを1点でくっつけ、反対側の最も距離のある部分に正面の丸いロゴマークを。
側面には2本のリングで挟み込むように六角形のロゴマークを配置しています。
リング腕部分の太さは1.5mmと太くはありませんが、リングを2つ組み合わせ、さらに正面のロゴマークや側面の六角のロゴマークと各所でロウ付けしているため、強度は全く問題ありません。
正面と側面のロゴマークはフラットな板で、リングは着け心地を考慮して丸い棒を丸めて製作しています。
正面から見るとロゴの切れ目に合わせてリングもカットしています。
ロゴの雰囲気を損なわないように、そして全体が一つのリングとして違和感の無いように製作しています。
製作方法としては、各パーツを製作した後で全体を組み立てていく感じ。
↑が各パーツが完成して組み立て前に入る状態。
リングの腕部分はφ1.5mmの銀丸線を丸めて端同士をロウ付けして製作。
ロゴマークは同じく1.5mm厚の銀板から切り抜いて製作しています。
今回のリングで最も気を使う点は、できるだけ寸法に正確にそれぞれのパーツを作り上げる、という部分。
全てのパーツの寸法が合っていないと、綺麗に組み立てることが出来ません。
また、組み立てる際に各パーツをロウ付けするために接合面を合わせますが、その際のやすりがけの技術、そして当然ロウ付けの技術も必要になります。
ですので、彫金の基本的な技術ではありますが、ある程度の技術力が無いと綺麗に製作することが難しいリングなんです。
様々な技術が必要なリングですが、ここで最初の点に戻ります。
なぜ今回のリングは地金で製作したのか?
今回のリングは地金で製作した、と上にも書きましたが、なぜ地金で製作したのでしょう?
ワックスでも製作出来ない訳では無いですが、地金での製作を採用したのにはいくつかの理由があります。
まず第1に、仕上げの美しさの問題。
おそらくワックスで製作する場合も、地金の場合と同じように各パーツをワックスを削り出して作り、それぞれをくっつけて一つのリングにするでしょう。
そうして一つになったワックス原型をキャストしてシルバーにする訳です。
ただ、問題としてはキャスト後にそれぞれのパーツの細部や入り組んだ箇所に手をつけるのが難しい、という難点があります。
地金の場合は各パーツをある程度仕上げてからロウつけするので、組み立てた後の細部の仕上げは難しく無いですが、キャストの場合はどうしても表面が荒れます。なので綺麗に仕上げるにはやすりがけ等手を加えることが必須なんです。
今回のパーツは入り組んで工具が入らない箇所が多いので、キャスト後に全ての箇所を綺麗に仕上げるのは難しい、と判断しました。
そしてもう1点の理由としては、強度の問題。
今回は上記の通りリングの太さが1.5mmとあまり太く無い上に、正面のロゴマークに合わせてリングの一部をカットしている関係で、「各パーツ」の強度はあまり強いとは言えません。
結果的には色々な箇所でロウつけされているので強度には問題はありませんが。
一番上にも書いた通り、地金で製作した方が強度的には高いので、キャストでの製作よりも地金から製作する方法を選びました。
また、「歪み」という点も地金を採用した大きな理由です。
第1の仕上げの美しさの問題にも関わってきますが、ワックスは結構柔らかいので、細いパーツを組み合わせる際に歪みが出る可能性が高いです。
なぜなら、各パーツはワックスペンという道具で溶かしつつくっつける訳ですが、その際の熱で歪みが出るためです。
小さければ小さいほど全体に熱の影響を受けやすいので、各パーツを綺麗に作っても、組み立てた後に歪んでしまっては元も子もありません。
さらにいうと、「キャスト」という工程自体がある程度の歪みを覚悟しなければいけないもので、今回のように細い線の集合体だと、キャストから上がった後、色々な箇所が歪んでいる可能性があります。
そして、キャストという製法を採用する上で切っても切れない問題が、「縮み」です。
キャストはその製法上どうしても原型よりも仕上げが少しだけ縮みます。
なので通常のリングの場合はその点を考慮して0.5号とか1号とか大きめにワックス原型を製作しておく訳です。
(使用する地金によって変わりますが)
完成の寸法が例えば1cmのパーツの場合、原型は少し大きめに製作するのが基本です。
ただ、今回のリングは2つのリングが一箇所で繋がっているので、リングを装着するときは真円にはならないんですね。
この角度から見ると分かるかと思いますが、リングの構造上指を入れる角度は楕円になる訳です。
だからリングのサイズも通常より大きめにする必要がありますが、その点はとりあえず置いておいて。
上記のように「歪み」や「縮み」が出たリングは芯金という鉄の棒に通して叩くことで修正しますが、つまりその作業ができない、という事なんです。
なので指定通りのサイズを出すことが難しく、さらに綺麗な真円を出すことも難しい、という訳なんです。
なぜ地金での製作、という方法を採用したのか、少し細かく説明しました。
アイテムによって様々な作り方が考えられますが、その中で最適の方法をチョイスしています、ということが言いたかったんです。
(もちろんそれを実現するだけの技術力も)
あなたがイメージしているアクセサリーも今回のリングのように色々なメリットやデメリットを考えた上で、最適な方法で製作させていただきます。
クリスマスまで残り約40日。正直にいうと、あまり時間に余裕がありません。
もしあなたがクリスマスに向けてオーダーメイドアクセサリーをご検討中だったり、気になるようでしたら、ぜひお早めにお問い合わせください!
気にはなるけど、何をどうしたらいいのかわからない、という場合はコチラを参考にしていただければと思います。
クリスマスに向けてオーダーメイドアクセサリーをご依頼する上での心構え(というと大げさですが)や、話をスムーズに進めるための大事なポイントなどについて書いています。
最後に、今回のリングのスペックを紹介して終了です。
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SV925オーダーメイドリング
素材(Material): SV925(シルバー925)
サイズ(Size):13号
正面部分20mm×20mm、リング太さφ1.5mm
参考価格:¥40,000〜
納期:約2ヶ月
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オーダーありがとうございました!
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